訪問看護のことをお話しします その2

訪問看護を受けられる人は?                                                                                                   

訪問看護は、子どもから高齢者まで病状や障がいの程度に関わらず、すべての人が受けられます。訪問看護を希望するときは、かかりつけ医や入院している医療機関、近くの訪問看護ステーション、担当のケアマネジャー、地域包括支援センターなどにご相談ください。実際に訪問看護の開始は、ご家族やご本人の希望を聞いたケアマネジャーや病院の退院支援看護師からの相談が多いです。

訪問看護では、状況により介護保険制度を利用する場合と医療保険制度を利用する場合があり、制度上の制限はありますが、ケア内容や時間、方法など、一人一人に合わせたオーダーメイドの看護を受けることができます。

費用はどのくらいかかるのでしょうか?

かかった費用の自己負担は介護保険・医療保険の違いや、所得・年齢により異なります。病気や障がいなどにより自己負担が軽くなる制度もあります。

毎週1回、1時間の訪問看護を受けたときの費用の目安(加算料金なしの場合)

介護保険(1割負担)・・・約820円/回→1ヶ月で約3280円

医療保険(1割負担)・・・約1000円/回→1ヶ月で約4000円

※2割負担、3割負担の場合は、自己負担が2倍、3倍となります。

※加算には、緊急時訪問看護加算(24時間いつでも相談ができ必要時対応がある)、特別管理加算(在宅酸素や膀胱留置カテーテルを使っている場合)などがあります。

次に訪問看護の事例を紹介します。

(プロフィール)

75歳男性。6ヶ月前に脳梗塞となり言語障害、高次脳機能障害がみられ家族のこともわからない。混乱し大きな声をだし手足を動かすため、転落防止目的で病院では拘束されていた。嚥下障害のため胃瘻(いろう)造設。定期的な吸引が必要。病院からは在宅は無理と言われ、施設入所を勧められていた。

要介護5。妻と娘夫婦の4人暮らし。

(在宅療養に向けての経過)

拘束される姿を見たくないという家族の強い希望で在宅での生活を目指すことになり、入院中の病院で退院に向けたカンファレンスを2回行う。家族(妻・娘)、病棟看護師、ケアマネジャー、訪問看護師が参加。入院中に家族が胃瘻管理、吸引を練習すること、退院後は訪問看護師がサポートすることとなり、1ヶ月後に退院した。

(在宅での経過)

退院直後は、訪問看護師は健康状態の観察や医療ケアの状況の観察、家族の不安が少なくなるよう毎日訪問できる体制を整えた。吸引手技、胃瘻手技の確認とアドバイスを行い心配なことを確認。2日で家族は医療ケアに慣れたため、1日毎、2日毎、週に2回と家族の気持ちを確認しながら訪問の間隔を調整した。退院後は拘束をせず、家族が付き添い、家族がキッチンに行くときにはキッチンからモニターで様子を見ることができるように工夫した。訪問中は、家族にされるのを嫌がる口腔ケアや拘縮予防のためのケアを行いながら、家族の相談相手となり、ヘルパーや理学療法士との連携をはかりながら訪問を続けた。夜間、ベッドから落ち、緊急訪問し状態観察とベッドへ戻るのを介助。また、夜中に大きな声を出し起きていることもあり、妻に介護疲れがみられた。娘が昼夜のケアを担当し、妻を休ませようとしたが、精神的な疲れがとれず、ケアマネジャーとともにデイサービスやショートステイの提案をし、定期的に利用し、家族も穏やかに在宅介護ができるようになった。ご本人も施設サービスを楽しむようになり、次第に話ができるようになり、家族のことがわかるようになった。ご家族と各種サービスのバランスがとれ、介護リズムも整ったため、訪問看護は週に1回、健康状態の観察とご家族のケアの目的で訪問している。

協力的なご家族のこの事例は、頑張りすぎて介護環境が破綻しかけました。ご家族に思いがあっても、ご家族が頑張るだけでは在宅介護が難しいことが多いです。在宅生活は介護や医療のサービスを上手に取り入れながら、地域で支えていくものです。一人暮らしでも、訪問看護や訪問介護、訪問診療などのサービスを利用して自宅で過ごすことはできます。一人暮らしでも最後のときまで自宅で過ごすことは可能です。医療ケアを受けていても、病気や障がいがあっても、在宅で自分らしく過ごすことがあたりまえの社会になってほしいと思います。